年越しそば・引っ越しそばの秘密


日本人の食生活に深く根付いている「そば」は、われわれのさまざまな風俗習慣と結びついています。
例えば大晦日に「年越しそば」を食べる習慣がありますよね、それから年越しそばよりメジャーな風習ではないのですが「引っ越そば」を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。
ちなみに引っ越しそばは、自分たちで食べるのではありません。引越し先の近隣に挨拶代わりにお蕎麦を配るという風習です。

そんな「そば」と日本の風習について紹介していきたいと思います。

本当に深いそばの歴史

日本人の風習において、度々出てくる「そば」ですが、実はそのルーツは中国にあります。中国では9,000年前からそばの歴史があったとされています。一方日本は、797年奈良時代に完成した『続日本紀』に記載がありますがどちらにせよ、そばの歴史は本当に深くて、長く、遠い昔からあったことがわかります。

参考:そばのお話し |そば処武蔵

しかしながらもともとそばの原型は今のような麺状ではなく固形でした。江戸に入り現在のようにな麺状にする「そば切り」が発祥し、それが全国に広まったという話が残っています。

年越しそば

新年を祝う風習としておせち料理のはじまりが弥生時代からだと言われています。そもそもおせち料理は神々のお供えものとして作られたものですが、一般の人にお正月の定番として受け入れられたのは江戸時代から。

おせち料理2023|大丸松坂屋オンラインショッピング|おせち豆知識

一方で年越しそばは鎌倉時代から続いている風習で、やはり民間に根づいていったのは江戸時代からです。

というのも、そばに小麦を混ぜた二八そばが出てきたことで、これまで箸でつかむとボソボソとちぎれてしまうそばから、ツルツルとすすることができるそばに改良されていきました。

そうしたそばの変容にともなってか、引っ越しそばに込められた意味は主に3つあります。

  • 1つ目は、末永く幸せが続くようにとの願いを込め。
  • 2つ目はボソボソと切れやすい食べ物なので一年の災いを断ち切るという願いを込めて。
  • 3つ目、そばは体にも良い食材として、健康への願いも込められている。
    と言われています。

引っ越しそば

引っ越しそばは引越し先の近隣あいさつとして配る、ギフトのことを指します。

基本的には三軒両隣に配り、「末長く、細く長いおつきあいを」の意が込められています。

しかしながら引っ越しそばの風習はほどんど今では見かけることはなくなりました。というのも現在引っ越しには、おそばよりも、お菓子や日用品などを挨拶代わりに持っていく人が多くなったからです。
庶民の食材としての「そば」は段々と忘れ去られていくようです。

まとめ

今回は、何かと日本の風習に関わりの深い「そば」のお話でした。

古くから庶民の食べ物として定着した「そば」ですが、モノあふれる時代では、わざわざ選んで送るギフトとしてあまりふさわしいものではなくなったのかもしれません。
またそばアレルギーなどで食べられない人もいるため「引っ越しそば」は近年消えつつある風習のひとつになってしまいました。しかし、「引っ越しそば」に込められた、近隣の人と「末長く、細く長いおつきあいを」という願いは変わっていないような気がします。